最近3Dプリントで作ったもの紹介

友人が3Dプリンターで色々作っている様子を見ていて、以前から興味は持っていたのですが、 Scott Yu-JanさんのYouTube動画 を色々見るようになってからまた3Dプリントに興味がでてきたので、最近ようやくFusion 360を触り始めました。今回は3D CADの勉強方法と作ったものを紹介します。

3D CADの勉強と3Dプリントサービスでの注文

3D CADは id:puhitaku も使っているFusion 360を使い始めました。Fusion 360はかなりよくできていて、コンピュータにある程度慣れている人ならYouTube動画を1本見ればある程度使い始められると思います。自分は↓の動画を見たのですが、動画なので操作に迷うこともなく進められてかなりおすすめです。

youtu.be

3Dプリンターは持っていないので、外部の3Dプリントサービスを利用してプリントします。金額感はあまりわかっていなかったのですが、試しにこのチュートリアル動画で作成したケースを国内の某3Dプリントサービスで注文見積もりをすると11,822円となりました。このチュートリアルでは3.5mm厚でケースを作っているのですが、かなり分厚いようでその分料金も高くなっています。料金を下げるには、ケースの厚みを薄くしたりしながら体積を減らす必要があります。

自分は 3Dプリントサービスのガイドライン を見ながら、1.2-1.5mmぐらいの厚さでモデルを作成しました。また、強度をできるだけ保ちつつさらに価格を下げる方法としてHoneycomb構造にする方法や小さい部品は接続してまとめてプリントする方法があり、これらを取り入れながら料金を下げて印刷しています。

とはいえモデルに色々工夫を入れても注文を躊躇してしまう金額だったので、他のサービスを調べてみました。最終的にJLCPCBがかなり安くこちらで印刷しています。そもそも素材が違ったりするのでフェアな比較はできませんが、最も安い素材同士で比較すると1/3ぐらいの金額で印刷できるという印象です。同じ理由で注文をためらっていたという方はぜひご検討ください。

jlcpcb.com

作ったもの紹介

ここからは作ったものを紹介していきます。

Raspberry Pi Zero 2 Wケース

Raspberry Pi Zero 2 W Case

Raspberry Pi 4Bのケースは結局既製品をAli Expressで買ったのですが、Raspberry Pi Zero 2 Wのケースは2つ作成しました。1つは大きめのヒートシンクと一緒に使えるもの(画像左)、もうひとつは小型のLCDディスプレイや電源用のボタンスイッチ、LED(赤・白)をつけれるようにしたもの(画像右) です。Raspberry Pi Zero 2 Wのケースは小さくプリント費用も送料もかなり安いので3Dプリントの入門にはちょうどよいかもしれません。為替レートによって変動しますが、白い方が133.27円と黒い方が352.94円でした。このサイズなら複数個注文しても送料はおそらく200円台なので、トータル費用で比べてもかなり安くプリントができます。

白いケースはオフホワイトのレジン(8111X Resin)、黒いケースはSLS Nylon (3201PA-F Nylon)で印刷しました。電子機器のケースは耐熱温度を考えると基本的にNylonを選択したほうがよいと思いますが、デザイン的にオフホワイトを使ってみたかったのと、大きめのヒートシンクを積んでいるのでそんなに温度が上がらないことを願ってResinで印刷しています。

基本的に寸法もピッタリで反りも発生せず綺麗に印刷できていますが、右側のケースは蓋の表面にいれていた文字が読めませんでした。原因は自分が0.05mmで彫っていたので、プリント精度の問題なのか肉眼では識別できないぐらい彫りが浅いのかわかりませんが、さすがに厳しかったようです。

Raspberry Pi Pico Wケース

Raspberry Pi Pico Wとブレッドボードを取り付けて壁掛けできるケースです。 用途としては、自宅サーバーで動かしているHome Assistantと連携して何かしらのセンサーデータを送ったり、赤外線LEDをつけてHome Assistant経由で家電を制御したりしようと思っていたのですが、取り付けるセンサーや配置を決めきるのが難しそうだったので、ブレッドボードとRaspberry Pi Pico Wのデバッグ基盤ごと壁掛けできるようにしました。

ブレッドボードにLEDやLCDディスプレイなどを取り付けても見れるように、前面にはアクリル板を差し込みました。間違えてアクリル板の厚みである2mmピッタリの溝を彫ってしまっていたのですが、問題なくアクリル板は差し込めました。アクリル板の保護フィルムを付けた状態だと固くて入らなかったのでプリント精度の高さに助けられました。ただ結構反りが出てしまっていて、上下のパーツを連結するためのスナップがうまく機能せず蓋が簡単に外れます。ドライヤーで少し調整しましたがまだあまりピタッとハマる感じにはなっていません。スナップ部分は失敗しても固定できるようなプランを設計時に作っておくと良い気がします。

壁掛けディスプレイ

DELLのモニターが余っていたのですが、VESA非対応で使い道が無かったので分解して壁掛けディスプレイにしました。 モニターコントローラー部分は高電流が流れることもあり、専用ケースを設計してちゃんと固定できるようにしています。

こちらも先程のRaspberry Pi Pico Wのケースと同様、スナップで上下のパーツを固定する仕組みにしています。スナップが失敗したときのためにマジックテープで固定できるような穴を用意していたのですが、幸いにもスナップが機能して使わずに済みました。大きなパーツなので薄さを考えるとRaspberry Pi Pico Wケースよりも反りが出やすそうな気がしていたのですがうまくいったみたいです (反りの感覚はまだよくわかっておらず難しいですね...)

肝心の壁掛けディスプレイはAtmoph Window みたいにできるといいなと思っていたのですが、同じクオリティーにはならなそうな気がしています。フレームの設計で一部失敗した部分もありどう修正するかまだ考え中なのですが、時間がかかりそうだったので先にこのブログを公開しました。無事にできたらまた追記するか新しい記事を出そうと思います。

デスク周りの色々

テーブルグロメット

50mmのホールソーが家にあるので、机に50mmの穴をあけて机に充電器とかをさせるようにテーブルグロメットを作ってみました。ちゃんと伝わっているか自信がありませんが、イメージとしてはコンセント部分を挟んで固定するイメージです。今回印刷した中で唯一ネジの機構を付けたものでした。

結論としてはちょっと失敗していて、ネジを回そうとすると摩擦でかなり硬くなっています。ネジとネジ穴をピッタリのサイズで作ってしまっていたのが原因で、余白が必要でした。気が向いたときにやすりがけしてみます。

扇風機のマウントとカバー

普段の開発デスクは80cm x 60cmと結構小さめであまりスペースがありません (MTGが被ったときにキッチンスペースに机を移動させたりする関係で今は小さめのデスクを使用しています)。夏場はキャンプ用の三脚の扇風機とかも使っているのですが、机に置くと結構邪魔なのでマウントを作りました。

Before After

ついでにファンのカバーパーツがグレーで、自分の部屋に置くなら白いほうがいいかなと思い自作しました。構造的にピッタリ合わせるの難しいかなと思っていたのですが、印刷精度も高かったおかげでピッタリはまりました。このパーツに限らず円柱の直径を測ったり、丸みを帯びた物体の幅を調べるのは定規だとかなり難しかったので、Ali Expressで300円弱で購入したデジタル式のノギスで測りました。プラスチック製なのでもしかするとしなって測定誤差に繋がっていたりはしたのかもですが、使っている感じは問題なく概ね0.1mm単位で測れている感じがしました。

素材はJLCPCBで一番安いLEDO 6060 Resinを使いました。時間帯や光の当たり方によっては黄色みがかっているのでインテリアを考えるならやっぱり少し値段を払ってオフホワイトの8111X Resinを選ぶとよさそうです。

デスク周りその他

寸法を間違えてしまったのと構造的にはあまり工夫のないパーツなので詳細は省略しますが、他にもいくつか作っていました。

  • デスク横に通勤カバンをかけるためのパーツ
    • 特に失敗はしておらずむしろうまくできた気がするのですが、構造的には何も面白みがないので省略します。
  • Google NEST MiniとNature Remoを机の下に固定するパーツ
    • Nature Remoの寸法を測り間違えてしまい、Google NEST Miniしか固定できませんでした。Nature Remoは無理やり固定して使っています。
  • 机の裏にティッシュ固定するためのパーツ
    • これまで無印のダンボール製のティッシュケースを両面テープで机の下に固定していたのですが、白に変えたかったので自作。一応使っていますが、すこし小さく作りすぎました。
  • MagSafe充電スタンド
    • AnkerのMagsafe充電器をはめ込んで使うものなのですが、充電器とスマホの間に距離ができすぎてしまい充電はできるのですがスマホを固定できるほどの磁力がありませんでした。
    • また一度つけたMagsafe充電器を外す際、めちゃくちゃ固くて強くやったら割れました。色々と失敗...

MagSafe充電スタンド

はんだ付け用のサポート

画像だけ見ると何するものかわからないアイテムになってしまったのですが、はんだ付けの際に基盤や部品を挟んで固定する際に使います。 磁力の高いマグネットが底面についているのですが、AliExpressで売ってる https://ja.aliexpress.com/item/1005004497318071.html の商品とかと合わせて使用しています。 (はんだごてが近づくパーツでもあるため、一応Nylonを選択しましたが、実際使ってみると駄目だったりするかもしれません)

iPad Proスタンド

こちらも成果物だけ見てもよくわからないと思うので、一応経緯を下に書いておきます (書き始めたら無駄に長くなったので、読み飛ばすのをおすすめします)。

最近個人開発では基本的にTailscaleで自宅のUbuntuサーバーに繋いで、code-serverやVSCode SSH Remote Developmentで開発しています。これ自体にはかなり慣れてきてApple Silicon周りのトラブルも無く、プロジェクトの切り替えやOSSのコードレビューもむしろ快適です。自宅サーバー上で開発をするなら、外に持ち歩くデバイスも見直したいなと思い色々と模索することにしました。

まずは手元にあったiPad Pro 12.9インチを試しに持ち歩き始めたのですが、iPadだとキーリピートがうまく機能しなかったり、Chromeの開発者ツールを見れなくてJS/WASMまわりを触るときは困ったりと色々限界がありました。そこでTailscaleやChromiumVS Codeが使えるRaspberry Pi 4Bを持ち歩いてみることにしたのですが、iPad Proとあわせて持ち歩くと重量が気になるので減らしていきます。地味に重かったのがケース兼スタンドとして利用しているPIKATA Mag EZ Folioです。iPad Pro 12.9インチ用だと350gぐらいあるのですが、普段使っているカバンにはPCを入れる場所もあるので試しにこのケースを持ち歩くのをやめて、その代わり軽量なスタンドを設計してみました。

実物 CADデータ

軽量化のためRaspberry Pi 4Bと組み合わせて機能するようにしています。実測で7gしかありませんが、強度や安定感は十分です。旅行や帰省の際にまた試してみようと思います。

ケーブルホルダー

こちらは意図通り設計できて印刷もできていたのですが、失敗したアイテムです。 画像のようにmicroSDやUSB部品をパチっとはめ込んで、周囲にはUSB-Cケーブルを巻いて持ち歩こうと思ったのですが、結構固くてはめたらなかなか外れませんでした。NylonはResinとかと比べると柔らかい素材みたいですが、1.2mm厚とかだと今回の用途には厳しそうです。

釣り用リールのハンドル

完全に趣味の道具なのでこのブログで紹介するか迷ったのですが、今回唯一のプリント不良品です。 球状のものはプリントが難しいという話はYouTubeで見たことがあったのですが、これも一部崩れてしまったようです。

とはいえJLCPCBさんは事前に "could we kindly know if this is acceptable for you this time?" という感じでメールをくださっていたので、そのまま送っていただきました。

おわりに

以上、作ったものの紹介でした。 紹介しきれていないものもあるのですが、残りのアイテムも構造上は特に工夫がないのでこの記事での紹介はここまでにしようと思います。

最後の件に限らず失敗の可能性が高そうなアイテムは発注段階で細かくチェックしてメールで確認してくれるので、サポートとは頻繁にやりとりをしました。 システムのバグ (e.g. 注文ページで金額の表示がおかしかったり、通貨設定をJPYからUSDに変更してもJPYで表示が続いたり) にもいくつか遭遇して報告していましたが、返信も早く助かりました。

JLCPCBは本当におすすめで、今後も作りたいものが思いついたら注文を続けると思います。 公式TwitterアカウントにDMすると初回登録クーポンが多めにもらえるのでみなさんもぜひ!

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